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遮熱フィルムの遮熱性能について(カタログスペックの見方)その2

先回の「遮熱フィルムの遮熱性能について(カタログスペックの見方)」では、遮熱性能の高さをスペック表のなかで「遮蔽係数」の数値で比較できるということを書きました。

今回は、スペックのなかでも、参考にされることが多いものの、実は遮熱性能の正確な比較に出来ないことが多いスペックをご紹介します。

 

それは、赤外線カット率です。IRカット率とも呼ばれている数値です。

 

ご存知のように、赤外線は室内の温度上昇に深い関りがあります。熱線とも、言われています。一般的に地表に到達する赤外線の波長範囲は 780nm~2500nm ぐらい とされており、赤外線の中でも波長の短い近赤外線と呼ばれる光線がそのほとんどを占めています。この波長範囲というのが、今回の遮熱性能=赤外線カット率 ではないことと深い関係があります。

 

この赤外線が、室内の温度上昇と関係があるのですから、この赤外線を出来るだけカットすれば室内の温度の上昇も抑えられることとなります。そこで、赤外線カット率ですが、カット率が高ければ遮熱効果が高いような気がします。ところが、そうでもないのです。理由をご説明します。

 

先程、地表に届く近赤外線には、780nm~2500nm の範囲があると書きました。大抵メーカーが公表している赤外線カット率は、この範囲のどこかのピーク値を計測しているものです。あくまで、ピーク値なので、この波長のどの範囲をどれぐらいカットしているかは分かりません。それで、極端な場合ですが、ある波長だけのカット率が高ければ、赤外線カット率も高く公表でき遮熱効果が高いように感じてしまうわけです。

 

下の表を見ますと、その理由がお分かりいただけるかもしれません。

上記の表ですが、AとBの二つのフィルムの光学特性を表しています。縦軸は、赤外線の透過率を指していて、下に行くほどカット率が高いことを意味しています。横軸は、赤外線の波長範囲です。

Aのフィルム方が、グラフの波が下に(0に近い)ありますので赤外線カット率が高いことを意味しています。でも、1000nmをピークに上がっていっています。一方、BのフィルムはAよりもピークは低くないですが、波長範囲を広くカットしているのが分かります。それで、赤外線カット率としては、Aよりも高い数値ではありませんが、全体の遮熱効果という意味ではより効果があるということになります。

 

そして、このカット率の計測方法が、メーカーによって独自のものとなっているという点も、比較に適さない理由の一つになっています。

 

それで、結論としましては、遮熱効果をフィルムごとに比較するに際しては赤外線カット率ではなく、やはり規格や計測方法が統一されている、「遮蔽係数」 の値を比べた方がより正確な比較となるという事です。